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言霊

 言霊、という言葉があります。口から発せられた言葉それ自体に魂がある、という、古来から日本人の心に息づいてきた考え方です。汚い言葉を口から発すれば、投げかけられた相手ばかりでなく、自分にまで災いが及ぶ。美しい言葉、優しい言葉を発すれば、相手にも自分にも幸いが訪れる…そんな気がして、大好きな言葉です。
 コトバに魂が宿る、コトバに命がある、というのは、現代人にとっては突拍子もない発想かもしれないけれど、最近生まれた言葉(たとえばips細胞)が、人々の口から口に伝えられ、メディアなどによって広められていく様子を見ているうちに、コトバに魂が吹き込まれていくのを目撃しているような、不思議な気持ちになりました。
 私にとって、かつての「ips細胞」は、科学者の専門用語、いわゆるテクニカルタームで、特に何の感慨も引き起こすものではない、無機的でなんの手触りも感じさせない言葉にすぎませんでした。それがここ数日の間に、努力、とか、感謝、とか、チームワークとか、偶然とか奇跡とか・・・いろいろな価値観を呼び起こす、生き生きとした表情を見せる言葉に変化してきたのです。残念ながら、最近の報道によって嘘とか疑惑といったイメージも見え隠れするようになってしまいましたが、それもこの言葉の影の部分として色を濃くしているように思います。この言葉が、実際に人の命を救うことになれば、ますます「ips細胞」は豊かな色彩を帯びることになるでしょう。
 『ビロードのうさぎ』という絵本があります。長く使われているうちに、ぬいぐるみに命が宿り、持ち主にとって本当にかけがえのない、ただひとりの「友達」となっていくお話。持ち主がぬいぐるみに注いだ愛情と、積み重ねられた時間、その間に生まれた思い出が、どこにでもある「なんの変哲もない」ぬいぐるみを、持ち主にとって世界に一つしかない、かけがえのないものに変化させていく。客観的に見れば、持ち主の心の中にだけ起こる情緒の働きですが、ぬいぐるみに「魂が宿った」と表現する方が、持ち主の心の中の実感により近いのではないでしょうか。
 「ことば」にも、そうして魂が宿っていくのではないか。「ips細胞」という言葉を聴くたびに、私の心の中でゆっくりと変化していく「ips細胞」の様子を観察しているうちに生まれた想いです。
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by yumiko_aoki_4649 | 2012-10-16 20:14 | 詩、詩論 | Comments(0)
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