Yumiko's poetic pictures

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光の窓

こぶしの花がほぐれてゆく
記された文字をたどるように
花びらをなぞる光の指
仰ぎ見る枝に切り取られた空が
しめった黒土の上に落ちて
無数の光の窓が生まれる

明るさを踏んで歩きながら
花の吸い上げていくものに耳を澄ませる
胸に耳を寄せたときの 力強い鼓動
その向こうに流れのぼる 懐かしい気配
眠りのたびに 私のかたわらを流れ行くもの

こぶしの木の内をめぐり
私の肌の下を走り
青空の果てまでのぼりゆくもの
幾億年の時の記憶が
私の芯に折りたたんでしまわれている
それを開いて見せるのが
母と名付けられた者に
課せられた役目だと知りながら
すぐに破れてしまう薄皮を
広げのばすことができない

戯れていたこどもたちの
やわらかく湿った指は
ほどかれて既に遠い
母である必要はもうないのだと
がらんどうのからだを樹の陰に寄せる

名を脱ぎ捨てれば
身に言葉を記すことが出来るだろうか

重みに耐える空の下で
文字が静かに開かれていく
光が私をとかしていく
したたりが水面に落ちて
波紋がひろがる

『ユリイカ』2014年6月号 入選
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-05-28 16:15 | 詩、詩論 | Comments(0)
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詩や詩に関わるものごとなど。


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