Yumiko's poetic pictures

yumikoaoki.exblog.jp ブログトップ

柴田 三吉 『角度』 書評

第48回日本詩人クラブ賞 柴田 三吉 『角度』(ジャンクション・ハーベスト)

2014年『詩と思想』12月号 「新刊selection」コーナーに掲載した書評を、再掲します。

 灰色の表紙の縁に、モノクロームの福島の地図。白で印字された詩集名と作者名は、角度を変えると灰色の地と地図に紛れてしまう。さりげない趣向を凝らした表紙が、ある種の予感に誘う。
 本文は、被災地のボランティアに応じた人の、その折の心情を細やかに拾い上げた行分け詩と、震災時を含む東京における日常を、日記体で綴った散文詩とからなる。浜辺で拾った壊れたオルゴールを鳴らそうと試み、「そうか 共鳴板が必要なんだ・・・ひとの胸に重ねたら/ひとの心の響きがするだろうか」(「空」)とつぶやく。アルバムから泥を洗い落とす作業中、不手際によって写真の一部が消えてしまい「あとに残された、存在の空白」に胸を衝かれる(「洗う」)。規制線の前で「手を上げて立ちふさがる男たちの、苦しげな顔」「火葬できない柩たちの/しずかなあえぎ」に直面し、「狂った時計のような」自らの心音を聴く(「消滅」)。その時々の作者の心が、リアリズムの手法で丁寧に描かれ、胸に迫る。
 他方、窓辺に置かれた三角フラスコが、日々増えていく「水」によって育って行く、という物語を介在させつつ、衰えていく母との日常を綴る散文詩は、現実でありながら夢を内在させているような不確かさを抱えている。平穏な日常とは何か。被災地、という圧倒的な現実を前に、薄れてしまった日常を言葉で確かめつつ取り戻していく。そんな作者の思いが静かに記録されている。
[PR]
by yumiko_aoki_4649 | 2015-04-01 11:17 | 読書感想、書評 | Comments(0)
line

詩や詩に関わるものごとなど。


by yumiko
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite