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今月の「詩と思想研究会」提出作品

網を張る


おおきくはりめぐらせた網に 朝露が重くゆれている 八本の
足の爪の先まで すべてを目にして ひきよせられてくるもの
を待つ

きのう捕えたかげろうの 秋空を薄く カミソリで削いだような
薄翅は あらゆる色を映しながらも 留めることを知らない薄い
皮膜に過ぎなかった 糸でからめとり 体液を吸う のどもと
を過ぎていくのは メロンジュースのようなみどりいろ

網のふるえが爪先から腰を抜けて腹の底に届く 暴れる蝶の
鱗粉は 角度によって色を変える虚飾の泡沫でしかなかった
掴もうとすれば 網の隙間から落下していく ほしいものは
基盤と骨組み 起点を束ね翅を羽ばたかせる 胸の筋肉

破られていく網をまたぎ越して 入念に糸をかける 二度と
飛び去って行かないように それから胸もとにねらいを定めて 
口もとの針を打ちこむ とかされのどに流れこむのは ブラッ
ディオレンジと梅の芳香 それから胆汁のような底冷えする味

翅の力も借りず 風の力にも頼らず やわらかなからだの
内実のみで 空を飛ぶことはできないものか ふくらんだ腹を
ひきずりながら 網を手放せば落ちる重い肉体を想う

大地に打ちつけられる前に 私は糸を放つだろう のどもとを
過ぎていった肉が とけあい変容し 透明な粘液となって中空
に産み出される 風がそれを糸に変える 腹の先に連なる糸が
からだを空の高みへと運び上げる

私を充たすものよ 飛びこんで来い 飛ぶに不得手な不器用
な翅を せわしなくばたつかせて まるまると肥えた うまそう
な腹を 空の陽にさらけだして 自分の力で飛ぶものの肉に
私は 飢え 餓えている

研究会6月(講師・詩友の講評を得て、若干改稿しました)
本来は縦書きです。
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by yumiko_aoki_4649 | 2015-06-28 11:29 | 詩、詩論 | Comments(0)
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詩や詩に関わるものごとなど。


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