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声ノマ 全身詩人、吉増剛造展 の感想を、吉増風に記してみる。

『我が詩的自伝』は、「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」に行ったときに、買いました、お土産に、と思って。剛造ってスゴイ響き、つよい、コワイ、ひびき・・・なんだけれど、すごくやわらかいのね、実際に声を、音声で、聴くと。上品で、ふわ~んと漂っている。ひとつひとつ、掘り出すというのか、つもり重なっている、少しぬれた薄い膜、のようなものを、すうっとめくって、裏表をゆっくり、たっぷり眺めて、ああ、この言葉ね、と嬉しくなるような感じで、言葉を抜いて、空中に並べていく。それが、ひだみたいに、天井から釣り下がって、つらなっている。

 東京国立近代美術館の、館内は全部黒、黒い空間に黒い幕を巡らせて、黒、でした。どこからでもはいれる、でられる。ひびいているんだ、かん、かん、かん・・・銅を、銅板をうがつ、音が。それから、声。文字を、ふうっと手のひらから吹いて、空間に浮べる、ような感じ、その声が、いろんなところから、流れて来る。写真の部屋、というか、ゾーン、空間。いちばん感動したのは、そこでしたね。薄い膜に写した、景色が、フューシャピンク、黄緑、カーマインイエロー・・・彗星みたいに、星の尾みたいにぼわーんとひろがって、重なって、そこに、あるんです、その、時間が。多重露光。その、場所にいた、その時の、こと。言葉を付けていく、これは、あっても、なくても、いいのね、なくてもいい、ということではないけれど、あると、もちろん、後から読む。読んだ時の、その今が、またふわあっと広がって、重なる。

 MOMAT みゅーずぃあむ おぶ もだあん あーと の略称なのかな、そのパンフレット、7を写しますね。〈怪物君 Dear Monster 2011年の東日本大震災から約一年後に制作がスタートした作品。前半の巻物仕立ての部分は吉増自身による詩作で、後半は、主として吉本隆明の著作のうち、『日時計篇』や『マチウ書試論』などを書き写した上に、水彩が施されています。前半部分では、吉増自身による本作の朗読をお聴きいただけます。また最後の部分では、〈New gozoCine〉、すなわち〈怪物君〉後半部分の制作風景を吉増自らが撮影した映像作品をモニターで見ていただけます(8台とも内容は同じです)。〉漢字と平仮名、カタカナ、全部読むのね、丁寧に、裏返すように、味わいながら。文字の大きさは声の大きさなのかと思っていたら、そうじゃなかった。ぜんぶ、ゆっくり、間を楽しみながら、読む。沈黙の間に、息が、流れたり、止まったり、する、している。絵の具をたらしたりぐしゃぐしゃにこすったり、その間も、ずっと話しているのね、隆明さんと。書き写された向こうに、ゆらゆら立ち上がる、その像をすうっとつかんだり、混ぜ合わせたり、また梳き込んだりしながら、たのしそ~うに、色を塗る、重ねる。対話、なんですよ、ずっと、そのあいだ。手を留めると、声が、終わっちゃう。だから、とめられない、えんえん、えんえん、続く。

 4のゾーンは、〈声ノート〉等、でした。カセットテープが、柱のように、といっても、横に伸びていく柱、なのですけれど、ぎっしり、並べられている。300本くらい、かな。いや、ちがうな、〈声ノート〉が300で、「声」のコレクションがあるんだ。〈ここでは総計約1000本のカセットテープを展示。天井から吊り下げられたスピーカーからは、〈声ノート〉を中心に10の音源を聞いていただけます〉伸びていく声。半分透き通った、プラスティックの箱に入った、声が、ぎっしり、並んで。

 1のゾーン、最初のところは、日誌・覚書、でした。〈19611月(22歳になる直前)から2012年までの日誌や覚書を展示しています。年を経るにつれて、「内なる声の吐露」から「(読書などを通して)外の声を聞き、内なる声を蓄えるためのメモ」へと、日誌の役割が変化したことがわかるでしょう。筆跡の変化も興味深いところです。〉同じようなノートが、たくさん、たくさん。ぜんぶ、とってあるんだなあ。残る、と思っていたのかな、死んだ後も。遺書でしたよ、全部、そう考えると。この執拗さ、丁寧さが、吉増剛造なのかな、と思うくらいに。

 螺旋階段みたいに、裏側をぐるっと回って眺めたり、その上をトントンと登って行ったり、するみたいに、声が、ありました。ずうっとソフトに、傷口にガーゼをあてるときみたいに、ふわりと覆う、声、少しだけ鼻にかかっていて、しぼりだすよう、ではなくて、内側から抜き取ってそっと置いていく、ような声。間がすばらしい。読むときの、間合い。対話、なんだと思います。亡くなって、向こう側に行った人たちとの、白い紙を突き抜けて、紙の上にゆらいでいる場所での。
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(2016.6.7~8.7 東京国立近代美術館)

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by yumiko_aoki_4649 | 2017-03-15 11:20 | 美術展感想 | Comments(0)
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詩や詩に関わるものごとなど。


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