Yumiko's poetic world

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カテゴリ:詩、エッセイ( 23 )

詩とファンタジー 秋号

詩とファンタジーの秋号に「放流」という詩を載せていただきました。
どなたが絵を描いてくださるのだろう、とワクワクしながら待っていました。

さっそく、届いた秋号を開いてみたら、味戸 ケイコさんの、神秘的で奥行きのある絵が!
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水の底のようでいて、宇宙にたゆたっているような暗さと安らぎ、一抹の淋しさ・・・。

放流

金魚がするりと逃げていく
あなたがすくいあげてくれると思ったのに
さよならも言わずに行ってしまった
激しくふるえる胸を開いて
からっぽの水槽に水を汲みいれる
わずかに積もる砂の上に
残された卵を探す

あなたの井戸は
地球の芯に届いているから
きっと涸れることはない
ふつふつと砂を巻き上げるあなたの
胸の中にいくら指を差し入れても
やわらかくからみつくのは
生ぬるい水の流ればかり

ひび割れた水槽から
少しずつ水が漏れだしていく
もう逃がしてやりましょう
透き通って世界を映す粒々を
閉ざされることのない場所で
おまえたちだけはせめて
好きなところに泳いで行けるように

水槽の縁に触れた指の
腹からいつのまにか滴りが落ちて
湿った砂地に吸いこまれていく
私は私の手で始末をつけよう
あなたとの間に横たわる川に
すくいあげた卵をそっと
とき放つ

他にも素敵な詩や絵がたくさん載っているので、書店などで見かけたら手に取ってみてください。
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-10-17 15:59 | 詩、エッセイ | Comments(0)

炎天

燃え盛るカンナの中を
一本の直線が
のびて のびて
おまえの大きな靴が
自分一人の影を踏み抜いていく
入道雲をかき分ける大きな手のひら
一年で五センチも伸びたTシャツの背に
世界地図が滲んでいる

おまえが振り向かなくなったのはいつから
歩幅が釣り合わなくなったのはつい先ごろ
戯れるようにいなくなって
背もたれのように戻ってくる

おまえのまぶしさは
本から文字を払い落として
世界を名付け直すその手振り
歩み入る孤独な平野から
持ち帰るしたたりが
部屋をうずめ
家を満たす

窓を開けよう
光を導き入れるおまえが
あふれかえるものに溺れないように
流れ出す新しい姿が
燃え盛るカンナの中に
まっすぐ道を拓いていく
もう手をひかなくてもよいのだ
私は刻まれた足跡をくずさないように
過ぎ去った影をかたわらに感じながら
赤土の道を歩き続ける

ユリイカ9月号 投稿欄入選

日和さんの選評が、温かくてしかも伝えたい事を見事につかんでくださっていて、とても嬉しかったです。
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-09-13 21:49 | 詩、エッセイ | Comments(0)

手紙

抱きしめても抱きしめても抜けがら

月光が薄く流れ込む部屋
鏡台の引き出しから取り出した手紙
文字に折りたたまれた笑顔は
鏡から引きはがされた断片
つなぎあわせても綴じあわせても
あなたの目が映していた私を
取り戻すことができない

重なりあう三面鏡の浅葱色の道の奥に
あなたのやわらかな絵筆がひかっている
私のりんかくを埋めていった
なめらかなセーブルの穂先
置き忘れられたものを
ふり返ることもせずに
ガラスの扉を閉じてしまった

 あなたがつぶてを浴びている時
 私は羽毛ふとんの中にいました
 不用意に取りこぼした
 角張った言葉のかけら
 私の落として行ったものも
 その中にあったはずです

耳をふさぐ闇の底で
かすかに鉄錆びが臭う
水の流れる音がする
あるいは血の川かもしれない
手紙を舟に折り直したら
水脈に浮かべられるだろうか
ほんとうの想いがそこにあるなら
舟は流れをさかのぼり
源を探り当てることができる
舟があなたの元にたどりつくまで
私は息を吹きかけ続ける

『ユリイカ』2014年8月号入選
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-07-31 22:26 | 詩、エッセイ | Comments(5)

光の窓

こぶしの花がほぐれてゆく
記された文字をたどるように
花びらをなぞる光の指
仰ぎ見る枝に切り取られた空が
しめった黒土の上に落ちて
無数の光の窓が生まれる

明るさを踏んで歩きながら
花の吸い上げていくものに耳を澄ませる
胸に耳を寄せたときの 力強い鼓動
その向こうに流れのぼる 懐かしい気配
眠りのたびに 私のかたわらを流れ行くもの

こぶしの木の内をめぐり
私の肌の下を走り
青空の果てまでのぼりゆくもの
幾億年の時の記憶が
私の芯に折りたたんでしまわれている
それを開いて見せるのが
母と名付けられた者に
課せられた役目だと知りながら
すぐに破れてしまう薄皮を
広げのばすことができない

戯れていたこどもたちの
やわらかく湿った指は
ほどかれて既に遠い
母である必要はもうないのだと
がらんどうのからだを樹の陰に寄せる

名を脱ぎ捨てれば
身に言葉を記すことが出来るだろうか

重みに耐える空の下で
文字が静かに開かれていく
光が私をとかしていく
したたりが水面に落ちて
波紋がひろがる

『ユリイカ』2014年6月号 入選
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-05-28 16:15 | 詩、エッセイ | Comments(0)

星を産んだ日(詩と思想新人賞入選作品)

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詩を書き始めて、比喩、ということの意味を、初めて真剣に考えました。
伝え得ないこと、を、なんとか他者に伝えようと苦しんだりもがいたりする。それが人の宿命であるなら。
自分にしかわからないことを、どのように他者にもわかる言葉で伝え得るか、ということを探るならば。

比喩、その大切さ。

考えてみれば、聖書も仏典も、たとえや比喩によって、真理を語っているのでした。

喉から手が出るほどに、他者と共有しうる表現、が欲しい。伝える、ために。(実際に、喉から手がでるイメージが浮かぶと、いささか戦慄しますが・・・)

「星を産んだ日」は、自分の伝えたいこと、を掘り下げて行ったときに、最後に残ったテーマです。
詩と思想新人賞に応募し、初めてながら入選に選んでいただいた、今、一番大切な作品でもあります。

火の塊が私の中を降りる
押し開く力に息をあわせ
覚悟という言葉を押し出す
引き裂かれる痛みが全身の骨を走り
あふれこぼれて 皮膚の内に張り詰める
全ての緊張が一息に流れ出した瞬間
心臓をむき出したような赤い産声が響いた

汗にまみれた白い分娩台の上で
しわしわで赤い火の玉を胸に抱く
胎脂でべたべたの手足でもがき
小さな口を大きく開けて
乳首を求めて挑みかかる
吸い上げられて再びつながる
母と子の ふたつのからだ
ざわめいていた心が静まり
小さな口めがけて流れこんでいく

広げた両手にすっぽりおさまる
わずか2640グラムの重み
手足をそっと のばそうとしても
ばねのように力を弾いて
すぐに丸まってしまう

私が思わず指で触れると
すばやく小さな手が動いて
ぎゅうっと熱く握りしめた
その時 私の暗く深い場所から
熱く逆巻くものがほとばしり
押し寄せる黒い流れと一体となって
私を包み 通り過ぎていった

洗い浄められ
真白い産着に包まれると
たちまち人の顔となる不思議
寝入る息にリズムをあわせながら
内から火照るように沸き起こる記憶に
そっと心の指をひたす

あのときふたりを取り巻く大気が
ぬるく温かいものとなって
わたしたちをくるんでいた
闇の中で熱く燃える火の玉が
しだいに白く輝きを増す
無数の点滅する光の中で
ひとつだけがぐんぐんと膨れ上がり
私を呑みこむ のみこまれる

黒い流れのただ中にいて
いのちの周りだけ ほうっと明るい
指をつかむ小さないのち
どくどくと赤い律動
赤ん坊の私が私の指をつかみ
私の母が指をつかまれ
またその母へ
闇の中にのびていく
赤い 一本の流れ

握りしめる握力の内に
保たれてきた脈動の記憶
その流れの中に
私は今も 包まれている
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-01-02 17:38 | 詩、エッセイ | Comments(4)

第9回「文芸思潮」佳作入選・・・私の原点「宿題」

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初めて、多色木版に挑戦しました。予期していたものと、実際に行ってみるのとでは、雲泥の差。
見当、は紙一枚の薄さがよい。深すぎると紙がずれる。浅すぎてもダメ。絵の具を版にのせるのだと思っていたら、そうではなく、木地に絵の具をしみこませる。水を制するものは木版を制す・・・目から鱗、のことばかりでした。

本年は、常に原点に立ち返りながら、自分の立ち位置を確かめていきたい、と思っています。

「宿題」を掲示します。まだ詩を書き始めたばかりの頃の作品で、表現技法などに稚拙さが目立つのですが、その分、気持ちがストレートに出ている、自分にとっては大切な詩です。

c・・・が旅立った日の朝
夢を見た

白い小部屋に白木の机
机の上に
一冊の辞書

辞書は開かれていた
ページが
ぐしゃぐしゃに丸められて

丁寧に広げのばすと
そこには
Understandingの文字

その瞬間
四方の壁が燐光を発し
光の渦が押し寄せてきた
恐怖に駆られて壁をたたくと
身体は壁を突き抜けた

外は漆黒の闇
黒さえもない
一切の虚無

私はただひたすらに
闇の底へと
落ち続ける

自分の悲鳴に目を覚ませば
そこはいつもの
見慣れた寝室

私は私の身体を確かめ
ただ呆然と
朝日の中に座り続けた

    *

「これから天国への階段を昇ります」
そんなかわいいコトバを残して
おしゃれな靴をきちんとそろえて
c・・・が自ら旅立った日から
既に二十年が経とうとしている

「わかるよ」
そんなおざなりの一言が
かえってc・・・の心を
切り苛んでいたのではなかったか

答えはない

c・・・の父や母や兄や
祖父母や友や先生や親戚
その他多くの人々の
心に深く刺さった悲しみは
時と共に癒える

しかし
「救えなかった」という悔恨は
そんなだいそれたことを出来ると信じた
自分をあざ笑う仮面となって
未だに中空に留まり続ける

コトバは無力だ

とにもかくにも
c・・・は苦悩から解放されて
幸せの国に行ったのだから
それでよかった、と思うほかはない

  *

闇のただ中にいる者に
「明けない夜はない」などと
陳腐な言葉をかける愚かさ

共に闇の底まで降りて
泥にまみれる覚悟が無ければ
差しのべた手は
すがる者を突き放す
鋭い刃と化すだろう

だが闇の底にいる者が
自らの手で己の足元を照らすための
光のかけらを手渡すことなら
覚悟の定まらぬ者にも出来る

世界のどこかで眠り続ける
光のかけらを探し求めて
闇の力につぶされぬように
磨いて磨いて磨きぬいて
そっと「あなた」に手渡していく

それが
c・・・に課された「宿題」
のような気がしてならない
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-01-02 16:04 | 詩、エッセイ | Comments(0)

師恩に謝す

一行一行を独立させなさい
助詞に気をつけなさい
連句の匂い付けのように
ゆるやかに全体が連なるように

師の言葉は極めて具体的だった
とまどうほどに
無心にその作業に没頭するうち
見えてきたもの

虚空に架け渡された
かささぎの橋
見える世界から見えない世界へ
この橋なら渡って行ける

一羽の鳥はひとつの詩行
鳥は遥かな場所からやってきて
中有にとどまったまま
踏みなさい、と背を預ける

中つ国と呼び習わされるよりさらに前から
人は魂の行く末を鳥に託し
とらわれた地上の生から
永久に放たれることを願った

茫洋とした記憶の底から
先人の声がよみがえる
一歩足を踏み出せば
懐かしさが匂い立つ

言葉の底に深く沈んだ
担い手の千年の想いが
鳥の背の温もりを伝い
足裏からのぼりくる

私はただそれをたどり行けばよい
どこかに行こうとするのではなく
鳥たちの導く方へ
かささぎの指し示す方へ

先に歩み去った者が
そこここにともしびを灯している
そのありかを示してくれたあなたもまた
私の少し前を歩き続けている
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by yumiko_aoki_4649 | 2013-03-27 12:55 | 詩、エッセイ | Comments(0)

一枚の鏡のように

「わたし」が楽しいと「あなた」も楽しい
「わたし」が退屈だと「あなた」も退屈
でも
「わたし」が悲しいと「あなた」も悲しい
・・・とは限らない

たぶんきっと
「楽しさ」は
「わたし」と「あなた」の間に生まれるもので
「悲しみ」は
「わたし」の中に生まれるものだから

「わたし」の中の水鏡に「あなた」の影が映る

その水鏡が平らかに凪いで
水底が透き通るほど美しく澄んでいれば
「あなた」の悲しみも喜びも映るだろう

でも、いつのまにか水は濁り
周りに生い茂る木々の枝が
水面(みなも)にのびて
お日様の光をさえぎってしまう

木々の影のすき間に
波立ちさざめいている水面に
途切れがちに映る「あなた」の影
・・・の上に
色とりどりの葉が舞い落ちる

水面にゆれる葉の群れは
様々な模様を描きながら
しばしたゆたい、やがて
水底に沈んでいく

「ことのは」とは言い得たるものかな
水面に浮かぶ葉の美しさに
しばし驚き面白がるうちに
葉は水底に沈んでいく

落ち葉はいつか醸されて
滋養に富んだ土となるのだ
その泥濘の中から
美しい花が咲くや否や

すえた臭いの不気味な泡が
泥水の上にぶくぶくと浮く・・・
そんなことにならないように
水面に落ちる葉の様子には
常に心を配っていなければならない

水面が平らかに凪いで
湖水は清らかに透き通り
静かに光照り返す
一枚の鏡
・・・であるように
祈り、そして願う
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by yumiko_aoki_4649 | 2012-11-23 14:09 | 詩、エッセイ | Comments(0)

   ●

「 ● 」

かつて
黒丸ひとつの詩を書いた男がいた

意識すら凍りつく絶望的な孤独
身動きもままならず
消滅すら許されず
ただひたすらに
肌を切り裂く寒冷に
耐え忍ぶしかない暗黒
―の中にいる蛙に同化した男

彼は自らの絶望を眺め
広大な宇宙の中で
爪の先ほどの位置しか占め得ない
失笑してしまうほどに軽い
矮小な生を眺め
「記号」へと越境した

文字と記号との境界は
思いの他あいまいである
「記号」と「絵」との境い目もまた
だがそれは
言葉で表すという闘争を
放棄することと同義である

表し得ないものがある
しかもそれを
伝えずにはいられない
それが人間の持つ悲しい性(さが)なら
表し得ないもどかしさ
表現しえない切なさに軽く
あきらめの笑みを浮かべて
それでもなお
言葉で伝えることから逃げない

詩を書くとは、そういうことだ
そうせざるを得ない要請である
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by yumiko_aoki_4649 | 2012-10-06 07:54 | 詩、エッセイ | Comments(0)

第8回「文芸思潮」現代詩賞佳作入選

おかげさまで、第8回『文芸思潮』現代詩賞コンテストで、佳作をいただくことができました。
名著『詩とは何か』の著者、嶋岡晨先生が審査委員、と知り、思い切って応募した次第。
ささやかな一歩ですが、文芸誌への応募は初めてだったので、とても嬉しいです。
(○○賞、なんて、小学校以来かもしれない^^;)

選考結果は「文芸思潮」48号(11月25日発売)に掲載とのことですが、佳作は誌面には載らないので、インターネットサイトhttp://www.asiawave.co.jp/bungeishichoo/f-sakuhin.htm(作品の広場)の方に掲載手続きを取りました。ご興味のある方は、お手すきの折にでものぞいてみてください。

これからも、日々の暮らしを丁寧に過ごしつつ、絵を描くことと詩を書くことを大切にしていきたい、と思います。d0264981_21194665.jpg
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by yumiko_aoki_4649 | 2012-10-01 21:20 | 詩、エッセイ | Comments(4)
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詩や詩に関わるものごとなど。


by まりも
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