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星を産んだ日(詩と思想新人賞入選作品)

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詩を書き始めて、比喩、ということの意味を、初めて真剣に考えました。
伝え得ないこと、を、なんとか他者に伝えようと苦しんだりもがいたりする。それが人の宿命であるなら。
自分にしかわからないことを、どのように他者にもわかる言葉で伝え得るか、ということを探るならば。

比喩、その大切さ。

考えてみれば、聖書も仏典も、たとえや比喩によって、真理を語っているのでした。

喉から手が出るほどに、他者と共有しうる表現、が欲しい。伝える、ために。(実際に、喉から手がでるイメージが浮かぶと、いささか戦慄しますが・・・)

「星を産んだ日」は、自分の伝えたいこと、を掘り下げて行ったときに、最後に残ったテーマです。
詩と思想新人賞に応募し、初めてながら入選に選んでいただいた、今、一番大切な作品でもあります。

火の塊が私の中を降りる
押し開く力に息をあわせ
覚悟という言葉を押し出す
引き裂かれる痛みが全身の骨を走り
あふれこぼれて 皮膚の内に張り詰める
全ての緊張が一息に流れ出した瞬間
心臓をむき出したような赤い産声が響いた

汗にまみれた白い分娩台の上で
しわしわで赤い火の玉を胸に抱く
胎脂でべたべたの手足でもがき
小さな口を大きく開けて
乳首を求めて挑みかかる
吸い上げられて再びつながる
母と子の ふたつのからだ
ざわめいていた心が静まり
小さな口めがけて流れこんでいく

広げた両手にすっぽりおさまる
わずか2640グラムの重み
手足をそっと のばそうとしても
ばねのように力を弾いて
すぐに丸まってしまう

私が思わず指で触れると
すばやく小さな手が動いて
ぎゅうっと熱く握りしめた
その時 私の暗く深い場所から
熱く逆巻くものがほとばしり
押し寄せる黒い流れと一体となって
私を包み 通り過ぎていった

洗い浄められ
真白い産着に包まれると
たちまち人の顔となる不思議
寝入る息にリズムをあわせながら
内から火照るように沸き起こる記憶に
そっと心の指をひたす

あのときふたりを取り巻く大気が
ぬるく温かいものとなって
わたしたちをくるんでいた
闇の中で熱く燃える火の玉が
しだいに白く輝きを増す
無数の点滅する光の中で
ひとつだけがぐんぐんと膨れ上がり
私を呑みこむ のみこまれる

黒い流れのただ中にいて
いのちの周りだけ ほうっと明るい
指をつかむ小さないのち
どくどくと赤い律動
赤ん坊の私が私の指をつかみ
私の母が指をつかまれ
またその母へ
闇の中にのびていく
赤い 一本の流れ

握りしめる握力の内に
保たれてきた脈動の記憶
その流れの中に
私は今も 包まれている
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-01-02 17:38 | 詩、詩論 | Comments(4)

第9回「文芸思潮」佳作入選・・・私の原点「宿題」

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初めて、多色木版に挑戦しました。予期していたものと、実際に行ってみるのとでは、雲泥の差。
見当、は紙一枚の薄さがよい。深すぎると紙がずれる。浅すぎてもダメ。絵の具を版にのせるのだと思っていたら、そうではなく、木地に絵の具をしみこませる。水を制するものは木版を制す・・・目から鱗、のことばかりでした。

本年は、常に原点に立ち返りながら、自分の立ち位置を確かめていきたい、と思っています。

「宿題」を掲示します。まだ詩を書き始めたばかりの頃の作品で、表現技法などに稚拙さが目立つのですが、その分、気持ちがストレートに出ている、自分にとっては大切な詩です。

c・・・が旅立った日の朝
夢を見た

白い小部屋に白木の机
机の上に
一冊の辞書

辞書は開かれていた
ページが
ぐしゃぐしゃに丸められて

丁寧に広げのばすと
そこには
Understandingの文字

その瞬間
四方の壁が燐光を発し
光の渦が押し寄せてきた
恐怖に駆られて壁をたたくと
身体は壁を突き抜けた

外は漆黒の闇
黒さえもない
一切の虚無

私はただひたすらに
闇の底へと
落ち続ける

自分の悲鳴に目を覚ませば
そこはいつもの
見慣れた寝室

私は私の身体を確かめ
ただ呆然と
朝日の中に座り続けた

    *

「これから天国への階段を昇ります」
そんなかわいいコトバを残して
おしゃれな靴をきちんとそろえて
c・・・が自ら旅立った日から
既に二十年が経とうとしている

「わかるよ」
そんなおざなりの一言が
かえってc・・・の心を
切り苛んでいたのではなかったか

答えはない

c・・・の父や母や兄や
祖父母や友や先生や親戚
その他多くの人々の
心に深く刺さった悲しみは
時と共に癒える

しかし
「救えなかった」という悔恨は
そんなだいそれたことを出来ると信じた
自分をあざ笑う仮面となって
未だに中空に留まり続ける

コトバは無力だ

とにもかくにも
c・・・は苦悩から解放されて
幸せの国に行ったのだから
それでよかった、と思うほかはない

  *

闇のただ中にいる者に
「明けない夜はない」などと
陳腐な言葉をかける愚かさ

共に闇の底まで降りて
泥にまみれる覚悟が無ければ
差しのべた手は
すがる者を突き放す
鋭い刃と化すだろう

だが闇の底にいる者が
自らの手で己の足元を照らすための
光のかけらを手渡すことなら
覚悟の定まらぬ者にも出来る

世界のどこかで眠り続ける
光のかけらを探し求めて
闇の力につぶされぬように
磨いて磨いて磨きぬいて
そっと「あなた」に手渡していく

それが
c・・・に課された「宿題」
のような気がしてならない
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by yumiko_aoki_4649 | 2014-01-02 16:04 | 絵画、詩 | Comments(0)
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詩や詩に関わるものごとなど。


by yumiko
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