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クロスロード12号 感想

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北川朱実さんの個人誌 クロスロード12号。
詩篇3篇、エッセイ2編を収める。

冒頭の「火花」は、

 大きな息を一つ吐いて
 緑の炎を噴き上げる
 シュノーケル

という、鮮烈ながら、なんとも不思議な情景から始まる。煙になる船底の板は、「鯨と旅をした話を/空にする」「燃える丸太から/チェンソーの音がはじけ飛んで/姿をくらます青大将」「砂に半分埋まった乳母車は/燃え上がった瞬間/ほら/あまやかな匂いを放った」・・・海岸に流れ着いたものを焼却処分している光景のようだが、詩人はその傍らで、燃え尽きていく物達が"語る"のを聞く。鳥の群れが飛び立っていくのを目で追うラストは、物達の時間と魂が放たれていくのを詩人の心が観ていることを映している。

連載エッセイ、「伝説のプレイヤー12」は、ジャズピアニストのソニー・クラークについて。「哀愁ただようマイナー(短調)な音」が、当時のアメリカでは受け入れられず、むしろ日本で好まれ、やがて逆輸入と言えば良いのか、「いつまでも届かない手紙のようだったソニーの、アメリカでの評価に繋がった」という。
セロニアス・モンクのピアノの魅力が「蹴つまずくようなタッチ」、バド・パウエルは「目の前で音楽が生まれる瞬間に立ちあったかのような衝撃感」であるのに対し、「ソニーの魅力は、衝撃感ではなく、少し重くて繊細なひっかかりのあるタッチ」だという。見事な描写に、いつも感嘆する。

やはり連載エッセイの「路地漂流12」は、作家の梅崎春生について。無頼というより、落第人生という感の強い生き方の作家が、雑誌編集者の山崎恵津と結婚した頃から精力的に小説を書くようになった、という背景には、やはり恵津の影響があるのだろうか。
「すべて、どんな動きをとるか見当がつかない糸の切れた凧のような存在」だという『狂い凧』は、戦時中に軍隊で睡眠薬自殺をした弟の忠生の生涯を描いた小説だという。鮮やかなイメージの源泉を問われて、「これでも詩を作っていたからね」と頬を染めながら答えたという梅崎春生。
不勉強で、まだ梅崎の小説を読んだことがない。読んでみたいと思う。

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by yumiko_aoki_4649 | 2018-10-29 07:07 | 読書感想、書評、批評 | Comments(0)
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詩や詩に関わるものごとなど。


by まりも
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